結論から。古典は江戸時代から明治期に作られ、長唄(ながうた)や清元(きよもと)などの三味線音楽で踊る作品です。新舞踊(しんぶよう)は、いまの発表会では演歌や歌謡曲で踊る踊りを指すことが多く、歌詞が現代の言葉なので聞き取りやすいのが違いです。 番組の音楽の欄に「長唄」「清元」とあるか、歌手名があるかで見分けられます。
新舞踊と古典は何が違う?
いちばん分かりやすい違いは音楽です。古典は三味線と唄、新舞踊は演歌や歌謡曲などの録音で踊ることが多いです。 日本舞踊の教室の解説でも、江戸〜明治期の「古典」は唄の言葉が昔の言葉で聞き取りにくく、昭和以降の歌謡曲に振りを付けたものが「新舞踊」と呼ばれ、現代語なのでとっつきやすいと説明されています(坂東三乃智 日本舞踊教室)。
見る側から分かる違いを並べると次のとおりです。あくまで目安で、会や作品によって違います。
| 見るところ | 古典 | 新舞踊(いまの使い方) |
|---|---|---|
| 作られた時代 | 江戸時代〜明治期が中心 | 昭和以降 |
| 音楽 | 長唄・清元・常磐津・義太夫など | 演歌・歌謡曲・民謡など |
| 演奏 | 舞台上で生演奏のことも多い | 録音(音源)で踊ることが多い |
| 歌詞 | 昔の言葉で聞き取りにくい | 現代の言葉で聞き取れる |
| 1曲の長さ | 数分〜数十分(『松の緑』約8分、『藤娘』約20分) | 歌1曲分 |
上演時間は目安です。古典でも発表会では短く抜粋することがあります(日本舞踊の公演は何分?)。
「新舞踊」には2つの意味がある?
あります。もとは明治末から始まった「新しい日本舞踊をつくる運動」を指し、今は演歌などで踊る踊りを指すことが多くなりました。 辞典は、近年アマチュアが歌謡曲や演歌で踊る舞踊が大流行して「これを新舞踊とよぶようになっている」と書き、本来の新舞踊と紛らわしいとも指摘しています(コトバンク「新舞踊」日本大百科全書)。
本来の意味は、坪内逍遙(つぼうち しょうよう)が1904年に唱えた舞踊の改革論から始まった運動です。歌舞伎舞踊の題材が遊里に偏りがちな点を改め、詩的で芸術的な作品をつくろうという主張でした。大正時代には舞踊家の会が次々に生まれ、新作が発表されたと同じ辞典にあります。この流れの作品は、戦後は「創作舞踊」と呼ぶのが一般的になりました。
協会の公演案内で「創作」「新作」とあれば、こちらの意味です。三味線音楽を使う作品も多く、見た目は古典と近いことがあります。
発表会の番組で見分けるには?
曲名の横にある音楽の欄を見ます。「長唄」「清元」「常磐津」「義太夫」なら古典、歌手名や「歌謡曲」「民謡」なら新舞踊と考えて大丈夫です。 番組の読み方は日本舞踊の番組(プログラム)の読み方にまとめています。
もう一つの手がかりは舞台の上です。古典は舞台の後ろや横に唄と三味線の人が並ぶこと(地方=じかた)が多く、新舞踊は演奏者がいないまま音楽が流れることがよくあります。音楽の種類の聞き分けは長唄・清元・常磐津の聞き分けが参考になります。
新舞踊はどこを見ればいい?
歌詞がそのまま分かるので、言葉と振りが重なる瞬間を探すと楽しめます。 「雨」と歌えば手のひらを上に向ける、「月」と歌えば遠くを見上げる、という具合です。これは古典の当て振りと同じ考え方で、新舞踊でも使われます。
見るときは次の3つだけ意識すれば十分です。
- 歌詞の言葉が、どの手の形や目線になっているか
- 扇や手ぬぐいが何に見立てられているか
- サビで動きが大きくなるか、逆に止まるか
古典はどこを見ればいい?
歌詞が聞き取れなくても大丈夫です。あらすじを3行だけ読んでおき、衣裳の変化と止まる瞬間を見ます。 古典の多くは歌舞伎から生まれ、物語や情景が1曲の中で進んでいきます。
たとえば発表会で多い藤娘は、藤の花の精の娘が、浮気な男心をなじったり酒に酔ったりしながら恋心を踊る作品です。あらすじを知っておくと、唄の言葉が分からなくても、恥じらいやすねる仕草が「恋の場面」だと分かります。
どちらが上ということはある?
ありません。音楽と作られた時代が違うだけで、どちらも日本舞踊の楽しみ方の一つです。 一つの発表会で古典と新舞踊が両方並ぶこともあります。演歌が流れて会場の空気がやわらいだら、そこは肩の力を抜いて歌詞と一緒に楽しんでください。