結論から。大和楽(やまとがく)は、1933年(昭和8年)に生まれた三味線音楽で、日本舞踊で使う音楽のなかでは最も新しいジャンルです。洋楽の発声や二重唱を取り入れているので、声が重なってきれいなハーモニーに聞こえるのが特徴です。 番組に「大和楽」とあったら、歌詞よりもメロディと声の重なりを楽しむつもりで見ると入りやすくなります。
大和楽とは何?
大和楽は、実業家の大倉喜七郎(おおくら きしちろう)が1933年に始めた三味線音楽です。 辞典によると、一中節(いっちゅうぶし)・河東節(かとうぶし)・宮薗節(みやぞのぶし)・荻江節(おぎえぶし)など古い三味線音楽の良いところを取り入れ、洋楽の手法を加えて「新しい邦楽」をつくろうとしたものです(コトバンク「大和楽」)。
作曲と三味線は清元(きよもと)の名手が担い、清元の影響も強いと同じ辞典にあります。洋楽を取り入れながらも、洋楽に寄せすぎず日本の音楽らしさを守ろうとしたことが特色とされています。
大和楽と長唄はどう違う?
いちばんの違いは生まれた時代と声の出し方です。長唄は江戸時代に歌舞伎から生まれ、大和楽は昭和初期に洋楽の発声や二重唱・輪唱を取り入れて生まれました。 どちらも節(メロディ)を聞かせる「歌い物」の仲間で、物語を語る清元・常磐津とは別のグループに分けられます(俺の日本舞踊「日本舞踊の音楽」)。
見る側から分かる違いを並べると次のとおりです。あくまで目安で、曲や演奏によって違います。
| 聞くところ | 長唄 | 大和楽 |
|---|---|---|
| 生まれた時代 | 江戸時代(初期〜中期) | 昭和初期(1933年) |
| もとになったもの | 歌舞伎の音楽 | 一中節・河東節などの古い三味線音楽+洋楽 |
| 声 | 一人ずつ、または皆で同じ旋律 | 二重唱・輪唱など、声が重なる手法がある |
| 聞こえ方 | にぎやかで明るい曲が多い | メロディの美しい曲が多い |
長唄・清元・常磐津などの聞き分けは長唄・清元・常磐津の聞き分けにまとめています。
大和楽ではどんな曲が踊られる?
辞典では『あやめ』『隅田川』『団十郎娘』『狐』などが代表曲として挙げられています。 このうち『あやめ』は、日本舞踊でよく踊られる大和楽の曲として紹介されています(俺の日本舞踊「あやめ」歌詞と解説)。
作詞には小説家の長田幹彦(ながた みきひこ)らが加わっていて、言葉がやわらかく情景が浮かびやすいのも大和楽の曲の特徴です。北原白秋の詩による『城ヶ島の雨』も、大和楽の曲として踊られます(俺の日本舞踊「城ヶ島の雨」)。
番組で大和楽を見かけたら、どこを聞けばいい?
声が二つに分かれて重なる瞬間を探してください。そこが大和楽らしさがいちばん出るところです。 古典の長唄では皆が同じ旋律を唄うことが多いので、ハーモニーに聞こえたら「これが大和楽か」と分かります。
見るときは次の3つだけ意識すれば十分です。
- 声が重なったり、追いかけ合ったりする場面があるか
- 曲名(花・季節・水辺など)の情景が、扇や手の形にどう表れているか
- メロディが静かになったところで、踊り手がどう止まるか
歌詞が聞き取れなくても大丈夫です。曲名の情景を一つ頭に置いておけば、振りの意味が追いやすくなります。言葉と振りが重なる見方は当て振りとはが参考になります。
大和楽は新舞踊と同じもの?
違います。新舞踊は今では演歌や歌謡曲で踊る踊りを指すことが多く、大和楽は三味線と唄で演奏する邦楽の一つです。 番組の音楽の欄に「大和楽」とあれば、長唄や清元と同じく三味線音楽の曲です。違いは新舞踊と古典の違いで詳しく説明しています。
昭和に生まれた新しい音楽なので、古典の長唄よりも耳になじみやすいと感じる人もいます。発表会の番組の中で大和楽が出てきたら、肩の力を抜いて、声の重なりと情景を楽しんでください。番組の読み方は日本舞踊の番組(プログラム)の読み方にまとめています。