結論から。地唄舞(じうたまい)と上方舞(かみがたまい)は、ほぼ同じものを指します。 上方舞は京都・大阪の座敷で育った「舞」の総称で、そのうち地唄(じうた)を伴奏にするものを地唄舞と呼びます。屏風の前で静かに舞うので、大きな動きではなく、足の運びと息づかいを見ると楽しめます。
地唄舞と上方舞は同じもの?
ほぼ同じです。上方舞のほうが少し範囲が広く、地唄以外の音楽で舞うものも含みます。 辞典では「一般には上方舞すなわち地唄舞とみなされることが多い」「上方舞は地唄舞を含む、より広範囲のもの」と説明されています(コトバンク「上方舞」)。
呼び方にも歴史があります。上方舞という名前は第二次世界大戦後に吉村流の吉村雄輝が定めたもので、地唄舞という名前は東京で付けられたと同じ辞典にあります。番組に「地唄」「上方舞」のどちらが書かれていても、同じ系統の舞だと思って大丈夫です。
上方舞は、ほかの日本舞踊と何が違う?
歌舞伎から生まれた江戸の「踊り」に対して、上方舞は座敷で舞う「舞」から生まれました。 辞典は「歌舞伎舞踊が『踊』を根底にしているのに対して」「上方舞は『舞』の伝統を基盤にしている」と書いています(コトバンク「上方舞」)。
見る側から分かる違いを並べると、次のとおりです。あくまで目安で、会や曲によって違います。
| 見るところ | 上方舞(地唄舞) | 歌舞伎から生まれた踊り |
|---|---|---|
| 生まれた場所 | 町家の奥座敷・お茶屋の座敷 | 歌舞伎の舞台 |
| 背景 | 屏風だけ。燭台を置くことも | 書割(絵の背景)や松羽目など |
| 衣裳 | 着物に扇一本の素踊りが多い | 役の衣裳とかつらを付けることが多い |
| 動き | 静かで跳ぶことが少ない | 足拍子や見得など大きな動きもある |
| 音楽 | 地唄(三味線。箏が加わることも) | 長唄・清元・常磐津など |
動きが小さいのは、座敷の畳一畳ほどの中で舞うことから来ていると言われます(コトバンク「上方舞」)。地唄舞普及協会は、左右に燭台を一対置き、その内側が演じ手の世界だと説明しています(地唄舞普及協会「地唄舞とはなにか」)。
上方舞の流派には何がある?
井上流・山村流・吉村流・楳茂都(うめもと)流の4つが「上方四流」として知られています。 地唄舞普及協会もこの4つを挙げています(地唄舞普及協会)。
- 井上流:京都で生まれ、祇園を中心に代々女性が継いできたと説明されています。京都で育った舞は「京舞(きょうまい)」とも呼ばれます。
- 山村流:大阪で生まれた流派。能や人形浄瑠璃に縁が深いと紹介されています(和樂web)。
- 吉村流:京舞を学んだ流祖が大阪で始めた流派。
- 楳茂都流:大阪で発展した流派。
関東の花柳流・藤間流などとの違いは日本舞踊の流派の違いにまとめています。流派ごとの優劣はなく、成り立ちが違うだけです。
上方舞はどこを見ればいい?
足の運び・指先・息づかい(間)を見ます。動かない時間も表現なので、次の動きを待たないのがコツです。 地唄舞普及協会も「足の運びや指先の動き、息遣い(間)など、繊細な表現」と説明しています。
和樂webの記事で、山村流の舞踊家は「舞」は動きが抑えられている分、心情がにじみ出ると話しています(和樂web)。見るときは次の3つだけ意識すれば十分です。
- 顔がどこを向いているか(目線の先に、恋しい人や景色がある)
- 扇や袖をどう扱っているか(扇が手紙や雪に見立てられることがある)
- 唄が伸びている間、体がどれだけ静かか
番組に『黒髪』とあれば、上方舞の代表曲です。あらすじは演目ページ「黒髪」で3行だけ読んでおくと、動きの少なさが「退屈」ではなく「こらえている女心」に見えてきます。
東京の発表会でも上方舞は見られる?
見られます。日本舞踊協会の公演でも、上方舞は一つの柱として番組に入っています。 第67回の協会公演は「古典舞踊の名作、近現代に創作され評価の高い作品、そして上方舞まで」と紹介されていました(日本舞踊協会)。
一つの会で江戸の踊りと上方舞が続けて出ることもあります。そのときは、背景が屏風だけになり、音楽が「地唄」の静かな三味線に変わったら上方舞の合図です。