結論から。日本舞踊の手ぬぐいは、縮緬(ちりめん)なら娘の恋心、木綿なら綱や頭の飾りといった暮らしの道具を表します。 柔らかい布がしなやかに揺れていたら、心情を踊る「クドキ」の場面。ハリのある布を頭や腰に付けていたら、働く人や祭りの若者の小道具です。生地を見分けるだけで、場面の意味がおおよそわかります。
日本舞踊で使う手ぬぐいは、何種類ある?
生地で2種類に分かれます。柔らかい縮緬の手ぬぐいと、ふだんの暮らしで使う木綿の手ぬぐいです。
国立劇場の文化デジタルライブラリーは、手拭いには「縮緬という柔らかい生地を使ったもの」と「現代の生活でも使われている木綿のもの」があると説明しています(文化デジタルライブラリー「扇、手拭いの表現」)。同じ解説は、歌舞伎舞踊でいちばん多い表現は扇と手拭いを使ったものだとしています。扇と並ぶ、日本舞踊の二大小道具です。
縮緬の手ぬぐいは、何を表す?
縮緬の手ぬぐいは、娘や女性の「恋心」を表す道具です。
同じ解説によれば、縮緬の手拭いは女方の舞踊のクドキで使われることが「圧倒的に多く、女心の描写と切り離せません」(文化デジタルライブラリー)。クドキは曲の中ほどにある、動きがゆっくりになって心の内を踊る部分です。手ぬぐいを胸に当てる、両手で引き絞る、そっと目元に寄せる。布の扱い方そのものが、恋しさ・じれったさ・涙を語ります。
木綿の手ぬぐいは、何を表す?
木綿の手ぬぐいは、踊りの振りよりも「身なり」として使われることが多く、ときに綱などの道具に見立てられます。
文化デジタルライブラリーは、木綿の手拭いは「頭に乗せる、腰から下げるなど装飾的役割に使われることが多い」と説明しています(同上)。漁師・奴・鳶など、働く男や祭りの若者の役で、粋な身なりの一部として目に入るはずです。
見立ての代表例は『三社祭』です。「善の綱」という歌詞のところで、木綿の手拭いを綱に見立てる振りがあります(同上)。浅草の祭りの山車人形が動き出し、漁師の兄弟に善玉・悪玉が乗り移る曲で、手ぬぐいがぴんと張られたら「綱」と思って見てください(文化デジタルライブラリー「三社祭」)。
縮緬と木綿は、客席でどう見分ける?
揺れ方と、付けている場所で見分けられます。
あくまで見分けの目安です。演目や演出によって違うことがあります。
| 縮緬の手ぬぐい | 木綿の手ぬぐい | |
|---|---|---|
| 見た目 | 柔らかく、垂らすとしなやかに揺れる | ハリがあり、形がはっきり出る |
| 持つ人 | 娘・女性の役(女方) | 漁師・奴・鳶など男の役が多い |
| 出てくる場面 | ゆっくりしたクドキ | 登場の身なり、軽快な踊り |
| 表すもの | 恋心・涙・恥じらい | 身なり、綱などの道具 |
| わかりやすい演目 | 『娘道成寺』『汐汲』 | 『三社祭』 |
手ぬぐいを使う場面は、どの演目で見られる?
縮緬なら『娘道成寺』と『汐汲』、木綿なら『三社祭』が見つけやすい例です。
- 『娘道成寺』:花子が手拭いを手にしとやかに踊る「手拭いの踊り」がクドキにあたり、恋に悩み、嫉妬し、涙する娘心を手拭いの所作で見せる、と紹介されています(歌舞伎ガイド「京鹿子娘道成寺」)。→ 娘道成寺
- 『汐汲』:恋人の形見の烏帽子と狩衣を身に着けた海女・松風の曲。小道具に縮緬の手ぬぐいが入ります。→ 汐汲
- 『三社祭』:木綿の手ぬぐいが「善の綱」になる見立て。→ 三社祭
客席で手ぬぐいの見立てを見つけるには?
手ぬぐいが出てきたら、まず生地(縮緬か木綿か)を見て、次に「いま歌詞が何と唄っているか」を聞いてください。
縮緬が揺れていれば、そこは筋の中心のクドキです。細かい意味がわからなくても「いま恋の気持ちを踊っている」と思えば十分です。木綿が急にぴんと張られたら、綱や棹など別の物に見立てたサイン。扇と同じく、手ぬぐいも「何に見えるか」を当てるのが楽しみ方です。扇の見立ては日本舞踊の扇子は何を表す?、歌詞を形にする振りは日本舞踊の「当て振り」とは?で紹介しています。
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- 小道具の見立て — 扇・手ぬぐい・傘・晒し — 7分の動画で、扇と手ぬぐいが何に変わるかを確かめられます
- 娘道成寺 — 縮緬の手ぬぐいでクドキを踊る、いちばん有名な場面がある曲