結論から。日本舞踊の女形(女の役)と立役(男の役)は、踊り手の性別ではなく「肘」と「足先」で見分けます。 肘が体に寄り、足先が内向きなら女の役。肘を張り、足先が外向きなら男の役。衣裳やかつらがある舞台ならそれも手がかりになりますが、紋付で踊る素踊りでも、この2点だけで見分けられます。
日本舞踊の「女形」「立役」とは?
女形は女の役、立役は男の役のことです。もとは歌舞伎の言葉で、日本舞踊では「女踊り」「男踊り」とも呼ばれます。
歌舞伎では男性の俳優が女の役を演じるため、女らしさを形にする技術が育ちました。文化デジタルライブラリーは、歌舞伎の女方が「化粧や衣裳やかつらに加えて、声の出し方やしぐさ」で女性像を作ると説明しています(文化デジタルライブラリー「はじめての歌舞伎/女方」)。日本舞踊はこの形を受け継いでいます。
女性の踊り手が男の役を踊ることはある?
あります。日本舞踊では踊り手の性別と役の性別は別です。女性が奴(やっこ)や鳶頭(とびがしら)を、男性が娘を踊ることも珍しくありません。
発表会では、出演者の多くが女性です。そのため『供奴』のような男の役の曲も、女性が踊るのがふつうに見られます。「女の人が踊っているから女の役」と思い込まず、形を見てください。
女の役と男の役は、体のどこで見分ける?
いちばんわかりやすいのは肘と足先です。肘が体に沿っていて足先が内向きなら女の役、肘が外に張っていて足先が外向きなら男の役です。
日本舞踊の基本姿勢の解説では、女踊りは足の親指をつけて内股にし、二の腕を内側にひねって手を伏せる形、男踊りはつま先を外に開き、二の腕を外にひねって肘を張る形とされています(俺の日本舞踊「基本姿勢」)。女の役はさらに、なで肩にして肩を後ろに落とすと説明する教室もあります(坂東流 箕乃友「腰を入れる」)。
客席から見るときの目安です。流派や曲、場面によって違うことがあります。
| 見るところ | 女の役(女形) | 男の役(立役) |
|---|---|---|
| 肘 | 体に寄せる | 外に張る |
| 足先 | 内向き(内股) | 外向き |
| 膝 | 寄せる | 開く |
| 肩 | なで肩で後ろに落とす | 張る |
| 動き | 小さく、なめらか | 大きく、足拍子が多い |
どちらの役も、腰を落として踊るのは同じです。違いは腰から上と、足の向きに出ます。
衣裳やかつらからも見分けられる?
見分けられます。衣裳とかつらを付ける「衣裳付け」の舞台なら、振袖や日本髪は娘、尻をはしょった姿や大きな提灯・毛槍は奴、と衣裳が役を教えてくれます。
文化デジタルライブラリーは、女方の舞踊は主に女性の恋心を、立役の舞踊はさまざまな職業や風俗を描くと整理しています(文化デジタルライブラリー「歌舞伎舞踊の魅力」)。娘なら「誰かを想っている」、奴や物売りなら「仕事ぶりを見せている」と考えると、筋がつかみやすくなります。
ただし、衣裳だけでは決めないでください。『汐汲』の海女・松風は恋人の烏帽子と狩衣を、『浅妻船』の遊女は烏帽子と水干を身に着けますが、どちらも女の役です。男の衣裳を着ていても、肘と足先が女の形なら女の役です。
素踊りでは、どうやって見分ける?
素踊りでも、肘と足先で見分けます。紋付や着流しのまま踊るので衣裳は手がかりになりませんが、体の形は衣裳付けと変わりません。
西川流は素踊りについて「色々なキャラクターを踊り分けないといけないので技量が試される」と説明しています(西川流「日本舞踊とは」)。素踊りでは、1曲の中で男の役と女の役を行き来することもあります。肘がすっと体に寄ったら女の役に替わった、肘が張ったら男の役に戻った、と見てください。素踊りの見方は素踊りとは?にもまとめています。
男女が一緒に踊る曲では、どこを見る?
二人の形の違いを見比べてください。同じ振りでも、肘と足先の向きが二人で違うはずです。
たとえば『団子売』は、餅をつく夫婦の二人踊りです。夫の杵造は肘を張り、妻のお臼は肘を寄せて、息を合わせて餅をつきます。二人とも女性の踊り手でも、形で夫と妻がわかります。→ 団子売
このサイトで次に読む
- 女の役と男の役の見分け — 肘と足先 — 見方のページで、肘と足先の違いを短くまとめています
- 供奴 — 肘を張り、足拍子を踏む男の役。発表会では女性が踊ることも多い曲