結論から。素踊り(すおどり)は、役の衣裳やかつらをつけず、男性は紋付の着物と袴、女性は紋付の着流しで踊る形式です。地味に見えますが、西川流は「色々なキャラクターを踊り分けないといけないので技量が試される」と説明しています(西川流「日本舞踊とは」)。見る場所を「間」と「扇の見立て」に移すと、素踊りのほうが踊り手の技がむき出しで面白い。
素踊り・半素・衣裳付け
- 素踊り:紋付袴・着流し。大道具も使わず屏風だけを背景に踊ることが多い
- 半素(はんす):役のイメージを象徴的に映す中間の拵え
- 衣裳付け:歌舞伎役者と基本的に同じ衣裳・かつら・化粧
番組に「素踊り」と注記されていれば、その曲は紋付袴で踊られます。
楽しみ方1:曲名から「誰」を先に決める
衣裳が役を教えてくれないので、番組の曲名で主人公を把握しておきます。『供奴』なら奴、『保名』なら恋人を失った男、『松の緑』なら禿(比喩)。このサイトの演目ページで主人公と物語を3行読んでおくだけで、素踊りが「誰の踊り」になります。
楽しみ方2:肘と足先で男女を見分ける
肘が体に寄って足先が内向き=女の役。肘を横に張って足先が外向き=男の役。素踊りでは、これが役を見分ける唯一の手がかりです。女性が男の役、男性が娘の役を踊る舞台も普通にあります。→ 女の役と男の役の見分け
楽しみ方3:扇の見立てと「間」を見る
衣裳の華やかさがないぶん、扇が何に見立てられているか(月・波・盃・刀)と、止まる瞬間の「間」がよく見えます。「動きと静止のバランスが舞踊家の技量を示す」(和ものびと)。上手い人ほど、止まっている時間が怖くない。
素踊りが多い曲
祝儀物(『松の緑』『鶴亀』『老松』『島の千歳』)は素踊りが多く、筋がないので扇の技と合方(三味線だけの間奏)を楽しむ曲です。『廓八景』は七世坂東三津五郎の振付以来、素踊りの男踊りで定着しました。おさらい会・勉強会は素踊りが基本で、入場無料が多く、初めての人には気楽な入口です。