結論から。見得(みえ)とキメは、踊り手が動きを止めて形を見せる瞬間、間(ま)は動きと止まりのあいだの呼吸です。 止まっているあいだは退屈な時間ではなく、感情がいちばん詰まった見せ場です。客席では、止まった瞬間に目線・指先・息の3つを見れば十分です。
日本舞踊の見得とは?
見得は、踊り手が動きを一瞬止めて、絵のような形を見せることです。 もとは歌舞伎の演技の手法で、日本大百科全書(ニッポニカ)は「劇の進行中、俳優が動作を一時静止して、固定した像をつくること」と説明しています(コトバンク「見得」)。
世界大百科事典は「身体を彫刻的に美しく見せて,固定した像を形成する」と書き、激しい動きのあとに形をきめるには「むずかしい呼吸」があると付け加えています(同)。映画でいえば、カメラが寄って一瞬止まるクローズアップにあたります。
歌舞伎から生まれた舞踊(歌舞伎舞踊)では、物語の山場、花道での登場、幕切れなどで見得が入ります。たとえば『供奴(ともやっこ)』では、奴が花道の七三で止まり、「してこいな」と言う登場の場面が見せ場です(俺の日本舞踊「供奴」)。
見得とキメはどう違う?
指している瞬間はほぼ同じで、言葉の出どころが違うと考えれば十分です。 見得は歌舞伎の言葉で、役の大きな見せ場に使われることが多い言葉です。キメ(決め)は、振りの区切りで形を決めることを、もっと広く指して使われます。
舞踊家の解説では、キメを「音楽が止まった一瞬の静寂に、強い意志や感情が凝縮される」瞬間と表しています(瑞鳳流(note))。どちらも「止まるのが仕事」の瞬間です。
| 言葉 | 主に使われる場面 | 客席での見分け方 |
|---|---|---|
| 見得 | 歌舞伎・歌舞伎舞踊の山場、登場、幕切れ | 首を回して睨む、大きく形を作って止まる |
| キメ | 日本舞踊の振りの区切り全般 | 音楽の区切りで、踊り手がぴたりと止まる |
| 間 | 動きと止まりのあいだ全体 | 止まってから次に動くまでの長さ・呼吸 |
言葉の使い分けは解説によって幅があります。上の表は客席で見分けるための目安です。
歌舞伎の見得と、日本舞踊の会での見え方は違う?
歌舞伎の見得には「ツケ」という音が付きますが、日本舞踊の会では音なしで静かに止まることが多いです。 歌舞伎では、見得がきまった瞬間に舞台の端で板を打つ「ツケ」の音を入れるのが原則とされます(コトバンク「見得」)。
発表会や協会公演では、地方(じかた=演奏者)の音楽に合わせて止まり、演奏の区切りでキメが来ます。音で知らせてくれない分、「あ、今止まった」と気づくことが最初の一歩です。
日本舞踊の間(ま)とは?
間は、動きと止まりのあいだにある呼吸の長さのことです。 和の文化を紹介する「和ものびと」は、動きと静止のバランスが舞踊家の技量を示すと紹介しています(和ものびと)。
舞踊家の梅川壱ノ介さんも、所作の速さよりも「間の取り方や呼吸」を見ることをすすめています(梅川壱ノ介さんの解説)。速く動くことよりも、止まっている時間を怖がらずに保てることが見どころになります。
止まった瞬間は、どこを見ればいい?
目線・指先・息の3つを見てください。 体が止まっていても、ここは止まっていません。
- 目線:どこを見て止まったかで、役が何を思っているかがわかります。遠くを見るのか、手元の扇を見るのか。
- 指先:扇や手ぬぐいを持つ手の先まで形が決まっているかを見ます。
- 息:止まってから次に動き出すまでの長さを、心の中で数えてみます。思ったより長く感じたら、それが「間」です。
拍手は、キメで周りから起きたら合わせる程度で十分です。掛け声は歌舞伎の文化で、日本舞踊の会では一般的ではないので、かけずに静かに見るのが基本です(詳しくは拍手のタイミング)。
このサイトで次に読む
- 見得・間・足拍子 — 止まる瞬間と、床を踏む音 — 『供奴』の動画で、止まる瞬間と足拍子を見比べる
- 供奴 — 花道の七三で止まる登場と、足拍子が見どころの曲