結論から。日本舞踊のかつらは、髪型そのものが「どんな身分の、どんな立場の女性か」を表しています。 客席で覚えるのは3つだけで十分です。娘の「島田」、町の女房の「丸髷(まるまげ)」、武家の妻や御殿女中の「片はずし」。幕が開いたら、衣裳より先に頭を見てください。
日本舞踊のかつらは、何を表している?
かつらは、役の年齢・未婚か既婚か・身分を表します。衣裳の色と同じく、見た瞬間に「誰か」を伝えるための約束事です。
日本舞踊の衣裳付けは、歌舞伎とほぼ同じ衣裳・かつら・化粧を使います。歌舞伎のかつらは髷(まげ)・鬢(びん)・髱(たぼ)などの部分からできていて、役の性格をいちばんよく表す部分を強調して作ると説明されています(コトバンク「かつら」)。
客席で覚えておきたいかつらは、どの3つ?
島田・丸髷・片はずしの3つです。この3つで、娘か、町人の妻か、武家の女性かがわかります。
客席から見るときの目安です。曲や流派、演出によって違うことがあります。
| かつら | どんな役 | 客席での目印 |
|---|---|---|
| 島田(しまだ) | 未婚の娘 | 髷が前後に長く、かんざしや花の飾りが華やか |
| 丸髷(まるまげ) | 町人の妻(女房) | 頭の上に丸くふくらんだ髷。飾りは控えめ |
| 片はずし | 武家の妻・御殿女中 | 髷の片側を外したような形。落ち着いた姿で、打掛と合わせることが多い |
島田は娘のしるし
島田髷は未婚の女性が結う日本髪の代表で、花嫁の文金高島田をはじめ多くの種類があります(コトバンク「島田髷」)。『藤娘』は元禄島田、『手習子』は島田髷と、娘の曲の多くがこの髪で踊られます。→ 藤娘
島田の仲間には、町娘の「桃割れ」もあります。幕末から大正にかけて多く結われた、若い娘の髪型です(Wikipedia「日本髪」)。
片はずしは武家の女性のしるし
文化デジタルライブラリーは、武家の妻や女官の役を「かつら『片はずし』、無地の着物に打掛」と説明しています(文化デジタルライブラリー「役柄とコスチューム」)。片はずしが見えたら、物語は武家の屋敷が舞台だと考えてください。
島田と丸髷は、どこで見分ける?
髷の形と飾りの量で見分けます。髷が前後に長く飾りが多ければ娘の島田、丸くふくらんで飾りが控えめなら女房の丸髷です。
江戸時代、女性は結婚すると髪型を変えました。娘は島田、妻になると丸髷というのが目安です。日本舞踊でも、同じ年ごろに見える女性でも、髪型で「恋をしている娘」か「暮らしを支える女房」かがわかります。娘なら恋心、女房なら夫や暮らしの話と考えると、歌詞が聞き取れなくても筋がつかめます。
遊女やお姫さまのかつらは、どう見える?
遊女(傾城)とお姫さまは、ひと目で別格とわかる華やかさです。
文化デジタルライブラリーによると、傾城は「櫛かんざしだらけの大きな髪」、赤姫(お姫さま)は「豪華な髪飾り」が目印です。白髪で額に紫の「帽子」を付けていれば老女です(文化デジタルライブラリー「役柄とコスチューム」)。『女伊達』のように、男勝りの女性が「奴島田」で出てくる曲もあります。→ 女伊達
発表会では、どの舞台でかつらを付ける?
役の衣裳で踊る「衣裳付け」の本舞台で付けます。紋付や着物のままで踊る素踊りや、おさらい会・浴衣会では付けないのがふつうです。
かつらは踊り手の地毛を結うのではなく、羽二重(はぶたえ)という布で髪を押さえてから、その上にかぶります。踊り手は開演のかなり前から化粧・着付け・かつらの支度をしています。素踊りでかつらがない舞台なら、役は肘と足先で見分けます(女形と立役の見分け方)。
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- 藤娘 — 元禄島田の娘が、藤の枝を担いで踊る。発表会でいちばん多く見かける演目