結論から。花道(はなみち)は、客席の左手を縦に通る、舞台と同じ高さの出入りの道です。 途中の「七三(しちさん)」と呼ばれる位置で踊り手が一度止まり、登場や退場の見せ場をつくります。ただし日本舞踊の会では花道を組まないホールも多く、その場合は舞台の袖から出てきます。どちらでも楽しみ方は同じです。
日本舞踊の花道とは?
花道は、客席の左手(下手・しもて)を縦に貫き、舞台から客席後方の揚幕(あげまく)までのびる道です。踊り手はここを通って登場・退場し、道の上でも演技をします。
もとは歌舞伎の劇場の設備で、寛文(1661〜73)ごろに生まれ、元文(1736〜41)ごろに今の形になったとされます。名前の由来は「ひいきの役者に花(祝儀)を贈るための通路だった」という説がありますが、根拠に乏しいとする辞典もあります(コトバンク「花道」)。
花道の奥の揚幕が開くと、そこから踊り手が出てきます。客席で後ろを振り返る人が増えたら、花道からの登場が近い合図です。
七三(しちさん)とは? なぜそこで止まる?
七三は、花道のうち揚幕から7分・舞台から3分ほどの定位置です。登場や退場を印象づけるため、主な役はここで必ず何かのしぐさや決めの形を見せます。
世界大百科事典では「現在の劇場ではもう少し舞台寄り」、また江戸の文化・文政期(1804〜30)までは逆に舞台から7分の位置を七三と呼んだ、と説明されています(コトバンク「花道」)。客席から見れば「舞台にかなり近いところで一度止まる」と覚えれば十分です。
止まる理由は、客席の近くで人物を紹介するためです。たとえば『供奴(ともやっこ)』では、大きな提灯を提げた奴が駆けて来て、七三で止まり「してこいな」と粋に言う場面が見どころとされます(俺の日本舞踊「供奴」)。ここで拍手が起きたら、周りに合わせて大丈夫です。
スッポンとは?
スッポンは、七三の床に設けられた小さな迫り(せり=床が上下する装置)です。亡霊や妖術使いなど、この世のものでない役が出たり消えたりするときに使われます。
床が四角く切り抜かれていて、奈落(舞台の下)から人が上がってきます。花道の途中から急に人物が現れたら「スッポンを使った=人間ではない役かも」と見当がつきます。
ホールに花道がないのはなぜ?
花道は多くのホールで常設ではなく、公演ごとに組む仮設の設備だからです。組むと客席の前方がつぶれ、設営の費用もかかるため、地域の公会堂や文化会館では花道なしの会がよくあります。
たとえば東京の浅草公会堂は、仮設花道(長さ約17m・幅約1.67m、設営料別途)を組むと1階席が545席から469席に減ります(台東区立浅草公会堂 ホール)。日本橋公会堂は「1.6m×17m(可動式、スッポン迫り付)」の花道を備えています(中央区立日本橋公会堂 ホール)。花道があるかどうかは、ホールと会の方針で決まります。
| ホールの例 | 花道 | 1階席への影響 |
|---|---|---|
| 浅草公会堂 | 仮設(約17m・有料) | 545席 → 469席 |
| 日本橋公会堂 | 可動式(17m・スッポン付) | 424席 → 382席 |
| 地域の文化会館など | 組まない会も多い | なし |
数字は各ホールの公式案内によるもので、公演ごとの設営は会によって違います。
花道がない公演では、どこを見ればいい?
花道がないときは、踊り手は舞台の袖(左右の端)から出てきます。花道でするはずの登場の見せ場は、舞台の上で行われると考えてください。
見方のコツは3つです。
- 出てくる袖を見る:多くは客席から見て左(下手)から登場します。唄が始まったら、舞台の左端に目を向けておくと登場を見逃しません。
- 最初に止まる場所を見る:舞台に出て最初に立ち止まり、形を決めるところが「七三の代わり」です。ここで人物の身分や気分が紹介されます。
- 座席の心配はいらない:花道がない会では、花道が見えるように左寄りの席を選ぶ必要はありません。舞台の正面で全体を見てください。
花道があるかどうかは、チケットの座席表で1階前方の列が消えているかで見当がつきます(くわしくは日本舞踊の公演、座席はどこがいい?)。
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