結論から。日本舞踊の公演で迷ったら、1階の中ほど(5〜10列目あたり)で、客席から見てやや左寄りを選んでください。理由は2つで、花道が客席の左手を通ることと、足元まで視界に入ることです。最前列と3階の端は、初めての人には向きません。
日本舞踊の公演、座席はどこがいい?
1階の中ほど・やや左寄りです。日本舞踊は上半身の表情と足さばきの両方を同時に見る芸なので、舞台全体が1つの視界に入る距離がいちばん見やすくなります。
「やや左寄り」なのは、花道が客席の左手を通るためです。花道は「客席左手を通る登退場路」で、舞台から7分・客席から3分の位置にある「七三(しちさん)」で踊り手が一度立ち止まり、しぐさや見得をします(コトバンク 花道)。花道の真横だと見上げる角度になって背中しか見えないので、花道より少し内側が良い席です。
花道が使われるかは、事前にわかりますか?
座席表の席数でわかります。花道は常設ではなく公演ごとに組むもので、組むと1階の前方の席が取り外されるからです。
- 浅草公会堂(東京・浅草)は1階席545席ですが、「1階席(仮設花道使用時)」は469席。76席分が花道に変わります。仮設花道は長さ約17m・幅約1.67mで、「舞台から客席を縦断するように同じ高さで張り出しており、迫力ある演技を披露できます」と案内されています(台東区立浅草公会堂 ホール)。
- 日本橋公会堂(日本橋劇場)は通常424席、花道使用時382席。花道は「1.6m×17m(可動式、スッポン迫り付)」で、「迫り・花道(スッポン付)を設置した舞台機構は、本格的な日本舞踊の公演を可能にしました」とあります(中央区立日本橋公会堂 ホール)。
つまり、チケットの座席表で1階最前列の列が消えていたら、その公演は花道を使います。地域のホールでは花道を組まない会も多く、その場合は左寄りにこだわる必要はありません。
最前列は良い席ですか?
日本舞踊では、最前列は必ずしも良い席ではありません。舞台を見上げる角度になり、足さばきと衣裳の裾が視界から切れやすいからです。
日本舞踊の舞台には、桧の板を敷いた「所作台(しょさだい)」が置かれます。「足のすべりをよくするのと、足拍子の響きをよくするため」のもので、高さは4寸(約12cm)あります(PAC 舞台用語集)。舞台そのものの高さに所作台が加わるので、最前列からは足元がさらに見えにくくなります。足拍子の「トン」という音はこの台のおかげで響くので、音だけなら後ろの席でも十分に届きます。
前・中・後ろ・2階で、何が見えて何が見えませんか?
あくまで目安で、会場の造りによって変わります。
| 席 | 見えるもの | 見えにくいもの |
|---|---|---|
| 1階 最前列〜3列目 | 表情、手の指先、衣裳の織り | 足さばき、舞台全体の構図。見上げる角度になる |
| 1階 中ほど(5〜10列目) | 全身と足元、地方(じかた)の並び、花道の七三 | ― 最も無難 |
| 1階 後方 | 全体の構図、複数人の隊列 | 表情。小型のオペラグラスがあると補えます |
| 2階 前方 | 舞台全体を上から。群舞の形がよくわかる | 花道の一部、細かい所作 |
| 3階・端の席 | 全体像 | 手すりなどで一部が隠れることがあります |
浅草公会堂は2階・3階の手すりについて「赤枠で囲んだ部分などに見切れが発生しております」と座席図に明記しています(同上)。買う前に会場公式の座席図を一度見ておくと外しません。
全席自由席の会は、どう席を取りますか?
開場時刻に合わせて行くのが確実です。日本舞踊の会は自由席が珍しくありません。
第66回日本舞踊協会公演(浅草公会堂)はチケット8,000円で「全席自由」、昼の部が開場11:00・開演11:30、夜の部が開場15:30・開演16:00でした(日本舞踊協会 公演情報)。開場は開演の30分前で、その時間に入れば中ほどの席はまだ選べます。
社中のおさらい会・発表会も自由席が多く、番組の前半と後半で席を移る人もいます。ただし移動は曲の切れ目に。
家族や知人が出演するなら、どこに座りますか?
通路側で、1階の中ほどです。出番の前後に動きやすく、荷物や花を持っていても周りに触れません。
半日がかりの会では、知人の出番だけ見て帰る人も普通にいます。通路側なら、席を立つのが曲の切れ目に合わせやすくなります。