結論から。日本舞踊の流派の違いは、主に「振付」「成り立ち」「芸名の頭につく名前」の3つです。同じ『藤娘』でも、花柳流と藤間流では振りが違うことがあります。ただし流派に上下や優劣はなく、見に行く側の作法や楽しみ方も変わりません。知っておけば、番組(プログラム)の名前が少し読めるようになる、という程度で十分です。
日本舞踊の流派はいくつある?
公益社団法人日本舞踊協会には、108の流派が所属しています(日本舞踊協会「日本舞踊とは」)。その中で、花柳(はなやぎ)・藤間(ふじま)・若柳(わかやぎ)・西川(にしかわ)・坂東(ばんどう)の五つが「五大流派」と呼ばれます。
ほかに、京都・大阪で育った上方舞(かみがたまい)の山村流・井上流・吉村流などもあります。関東の五大流派とは成り立ちも体の使い方も違う流れです。
花柳流と藤間流は何が違う?
成り立ちと、振りの付け方の傾向が違います。 藤間流は江戸の宝永年間(1704〜11)に始まった古い流派で、歌舞伎の振付を多く手がけてきました。花柳流は嘉永2年(1849)に初代花柳壽輔が始めた流派で、門弟の数が最も多い流派です。
振りの傾向は、解説記事では次のように紹介されています(にほんご日和「日本舞踊の流派」)。あくまで一般的な言われ方で、同じ流派でも先生や曲によって違います。
| 流派 | 始まり | よく言われる特徴 |
|---|---|---|
| 花柳流 | 嘉永2年(1849) | 手(振り)が多い。細かい間のリズム |
| 藤間流 | 宝永年間(1704〜11) | 手数の少ないおおらかな振り。踊り手の腹(気持ち) |
| 若柳流 | 花柳流から独立 | 品のある、手振りの多い踊り |
| 西川流 | 約300年前 | 多くの流派の源流。名古屋の「名古屋をどり」 |
| 坂東流 | 三代目坂東三津五郎 | 端正で切れのよい踊り。演劇的に「演じる」 |
各流派の公式サイトへのリンクと詳しい説明は、流派と名取の章にまとめています。
同じ曲でも、流派で振りが違う?
違うことがあります。 曲(音楽と歌詞)は同じでも、振付は流派や先生ごとに伝わっているためです。動画で予習した振りと本番の振りが違っても、どちらかが間違いというわけではありません。
予習で見ておきたいのは、細かい振りよりも物語と場面の流れです。たとえば藤娘なら、「藤の花の精が浮気な男心をなじり、酒に酔い、夕暮れに帰っていく」という大きな流れは流派が違っても変わりません。
番組を見て、流派は分かる?
分かります。名取の芸名は「流派名+個人の名」なので、「花柳◯◯」なら花柳流、「藤間◯◯」なら藤間流の人です。 名取になると流派の名を名乗れるようになり、花柳流なら「花柳」のあとに個々の名を付けます(にほんご日和)。
教室の発表会なら、番組には同じ流派名が並びます。日本舞踊協会の公演では違う流派名が並ぶので、「今日はいろいろな流派の人が出る会なんだ」と分かります(協会公演とは)。
流派が違うと、見に行くときのマナーは変わる?
変わりません。 服装、拍手のタイミング、ご祝儀や手土産の考え方は、流派に関係なく同じと考えて大丈夫です。違うのは「会ごとの案内」なので、招待状やチラシに書いてあることに従えば十分です。
出演者に「何流ですか」と聞く必要もありません。番組の名前を見れば分かりますし、感想は流派ではなく、その人の踊りについて伝えるのがいちばん喜ばれます。言い方に迷ったら発表会の感想の伝え方が参考になります。
このサイトで次に読む
- 流派と名取:五大流派と上方舞の説明、公式サイトへのリンク
- 名取・師範・家元は何が違う?:番組の名前で段階を見分ける