結論から。初めて見る人には『藤娘』『鷺娘』『京鹿子娘道成寺』『供奴』『京の四季』の5つをすすめます。理由は「物語が追いやすい」か「追わなくてもいい」かのどちらかがはっきりしているから。舞踊家の解説でも初心者向けに『藤娘』『鷺娘』『娘道成寺』が挙げられています(和ものびと)。
1. 藤娘(長唄・約20分)
上演回数がいちばん多い曲。「置→出→クドキ→踊り地→チラシ」の五段の型が教科書どおりに並ぶので、この曲で型を覚えると他の曲も読めます。注目は笠の紐を口にくわえる悔しさ、鉦が鳴る藤音頭、最後に藤の枝が戻る締め。→ 藤娘
2. 鷺娘(長唄・目安20〜30分)
白無垢と蛇の目傘の雪景色から、引き抜きで華やかな傘づくしへ、最後は鷺に戻って地獄の責め。衣裳が変わるたびに「別の顔」と思って見れば追えます。「傘の踊りは楽しむ場面、最後の苦しみは表情と手の震えを見る」。→ 鷺娘
3. 京鹿子娘道成寺(義太夫・長唄・歌舞伎で約70分)
「一人の女の恋心の展覧会」。白拍子花子が恋心をさまざまな姿で踊り、最後は蛇の正体を現して鐘に飛び込む。大曲なので発表会では「道行」「クドキ」など一部だけ踊ることも多い。番組でどの部分かを確かめて。→ 娘道成寺
4. 供奴(長唄・目安10〜12分)
主人のお供に遅れた奴が、主人の格好良さを自慢して真似し、足拍子で締める。「笑って良い曲」で、所作台に響く足拍子と横ギバからの立ち上がりが見せ場。男踊りの入口に。→ 供奴
5. 京の四季(上方端唄・目安5〜7分)
春の東山の夜桜、夏の四条河原、秋の紅葉、冬の雪見酒。物語はなく、歌詞の地名と季節を追えば全部わかる短い曲。扇が桜・傘・盃に化けるので、見立ての練習に最適。→ 京の四季
番組で見かけたら
番組(プログラム)に載っている曲名を演目ページで引き、物語3行と見どころ3つを読んでから行く。33演目を系統別(娘の恋/祝儀物/男伊達・祭/道行・狂乱)に並べています。筋のない祝儀物(『松の緑』『鶴亀』)は「筋を探さない」が正解です。