結論から。日本舞踊の公演は、予備知識がなくても楽しめます。ただし「何が起きているか」が見えないまま20分の曲を見続けるのは、正直つらい。見る前に次の5つだけ知っておくと、同じ舞台がまったく別のものに見えます。
1. 「誰」が踊っているかは、衣裳と持ち物で読む
幕が開いた瞬間、まず色を見ます。赤い振袖に豪華な髪飾りなら姫、華やかな振袖なら町娘、地味な着物に黒い襟と帯なら世話女房、大きな前結びの帯と高い下駄なら遊女(傾城)。これは歌舞伎の約束事で、衣裳付けの日本舞踊にもほぼ共通します(出典:国立劇場 文化デジタルライブラリー「役柄とコスチューム」)。
紋付袴や着流しで踊っていたら「素踊り」。役は衣裳ではなく体と扇で示されるので、番組の曲名から「誰」を先に決めておきます。
2. 音楽の種類は、演奏者の人数でわかる
舞台の奥や横に並ぶ演奏者を「地方(じかた)」と言います。唄い手が大勢横一列で笛や太鼓が入っていれば長唄。見台(譜面台)の前に2〜3人で語っていれば清元か常磐津。太い三味線で芝居のように語れば義太夫。番組の曲名の前に「長唄」「清元」と書いてあるので、答え合わせができます。
3. 曲には「型」がある
ほとんどの曲は「置(暗い舞台で唄だけ)→ 出(人物登場)→ クドキ(ゆっくりした心情表現)→ 踊り地(リズムで華やかに)→ チラシ(締め)」の順に進みます(出典:文化デジタルライブラリー「歌舞伎舞踊の構成」)。
物語があるのは主にクドキ。踊り地は当時の流行歌でリズムに乗る場面で、意味を追わなくていい。「同じ振りばかりに見える」と感じるのは、たいていここです。型を知ると、退屈な時間が消えます。
4. 扇と手ぬぐいは「見立て」で何にでもなる
扇は半分閉じて口元へ運べば盃、横にゆっくり動かせば波、先で指せば月。手ぬぐいは縮緬なら女心の表現、木綿なら綱。「いま何に見立てたか」を当てるのが、初めての人にいちばん楽しい見方です。歌詞に出てくる名詞(月・花・舟・酒)をそのまま動きにする「当て振り」も多いので、歌詞の名詞を3つだけ先に読んでおくと拾えます。
5. 拍手は「演奏が終わって、踊り手が決めたとき」
踊り手が決めの形で止まり、演奏が終わったときが確実です。花道の出やキメで拍手が起きたら周囲に合わせます。掛け声(大向う)は歌舞伎の文化で、日本舞踊の公演では一般的ではありません。上演中の撮影・録音は禁止です。
まとめ:見る前の5分で、ここまで
- 衣裳の色で「誰」を読む
- 演奏者の人数で音楽を知る
- 型を知って「いま物語のどこか」を追う
- 扇の見立てを当てる
- 拍手は曲の終わりに周囲に合わせる
このサイトの演目ページで、番組に載っている曲名を引いてから行くと、あとは客席で確かめるだけになります。