結論から。『藤娘』は「藤の花の精が、浮気な男心をなじり、酒に酔い、夕暮れに帰っていく」約20分の曲です。筋らしい筋はありません。見る点は3つ。笠の紐を口にくわえる悔しさ(クドキ)、鉦(かね)が鳴って酔う藤音頭、そして最後に藤の枝が戻ってくる締め。この3つを待ちながら見れば、初めてでも20分が短く感じます。
あらすじ(3行)
大津絵から抜け出した藤の花の精が、藤の枝を担いで現れます。浮気な男心を塗り笠を使ってなじり、「藤音頭」で酒に酔って華やかに踊り、夕暮れに雁を眺めて帰っていく。1826年初演、現在の演出は1937年の六代目尾上菊五郎によるものです(出典:文化デジタルライブラリー「藤娘」)。
曲の型が、教科書どおり
『藤娘』は「置(暗い舞台で唄だけ)→ 出(藤の枝を担いで登場)→ クドキ(男ごころの憎いのは)→ 踊り地(藤音頭)→ チラシ(十返りという名の)」と、五段の型がきれいに並びます。この曲で型を体に入れると、他の曲も読めるようになります。
注目点1:笠の紐を口にくわえる(クドキ)
「男ごころの憎いのは」の歌詞から動きが遅くなります。塗り笠の紐を口にくわえるのは、言えない悔しさの型。ここが物語の核です。
注目点2:鉦が鳴る「藤音頭」
「藤の花房 色よく長く 可愛いがろとて酒買うて」。鉦(かね)の音が入り、テンポが変わって酔いの踊りになります。意味を追わず、華やかさを楽しむ場面。
注目点3:藤の枝が戻ってくる
「てもさても 十返りという名の」で、最初に担いでいた藤の枝が戻り、空を見上げて幕。最初の小道具が戻るのは終わりの合図です。拍手の準備を。
予習の仕方
- 演目ページで歌詞対応の章つき動画(西川寛チャンネル)を開き、「注目ポイントへ」で出→クドキ→藤音頭→チラシを順に1分ずつ見る
- 歌詞の名詞を3つ覚える:笠、藤の花、酒
- 当日、上の3つの注目点を待つ
衣裳は黒地に藤の縫い模様の振袖から藤紫へ変わり、黒塗りの笠。同じ曲でも流派で振りは違うので、動画は「一つの例」として。