結論から。客席の髪型に決まりはありません。気にするのは自分の見え方ではなく、後ろの席から舞台が見えるか。頭の上で大きくまとめた髪と大きな髪飾りだけ避けて、低い位置でまとめる。着物で行くなら、形よりも「ツヤと毛流れ」。前日に決めるならこれで足ります。
日本舞踊の発表会を見に行くとき、髪型に決まりはある?
ありません。日本舞踊の客席にドレスコードはなく、髪型の作法も特にありません。普段どおりで構いません。考えるのは一点、後ろの席の人から舞台が見えるかだけです。
客席は出演者の家族や知人が中心で、主役は舞台の上です。客席は静かな背景でいられれば正解、という考え方は服装と同じです(→ 見に行く服装)。
なぜ高い位置のまとめ髪は避けるの?
後ろの席から舞台が隠れてしまうからです。 観劇マナーをまとめた recri マガジンは「大きな帽子や、高い位置のお団子ヘアは後ろの人の視界を妨げる原因になります」として、「観劇の際は髪型を低めにまとめる・帽子は脱ぐなどの配慮を徹底しましょう」と書いています(快適な観劇のために!おさえておきたい劇場でのマナー5つ)。
日本舞踊の発表会は、区民ホールや公民館のように床の段差が小さい会場でも開かれます。段差が小さいほど前の席の頭が舞台と重なりやすく、頭頂部のボリュームがそのまま影になります。高さを足さない、それだけの話です。
客席の髪型、迷ったときの早見表
あくまで目安で、会や会場によって気にする度合いは変わります。
| 迷っている髪型 | 客席ではどうか |
|---|---|
| 低い位置のひとつ結び・低めのお団子 | 問題ありません。いちばん無難 |
| 下ろしたままのロング | 問題ありません。背もたれとの間に挟まないように |
| 頭頂部の高いお団子・ボリュームを出した盛り髪 | 避けます(後ろの席の視界) |
| 大きな花飾り・立体的なバレッタ | 外すか、低い位置に付けます |
| 帽子・かぶりもの | 客席では脱ぎます |
| 香りの強い整髪料・ヘアスプレー | 控えます |
香りについては、同じ recri マガジンが「劇場は狭い空間のため、強い香りが充満すると他のお客さんの体調に影響を与えてしまうことも」として「特に香水や香りの強い柔軟剤・整髪料は控えめに」としています。日本舞踊家の梅川壱ノ介さんも、観客が避けるものとして強い香水を挙げています(日本舞踊を見に行く際の基本マナー)。
着物で行くなら髪型はどうする?
まとめ髪にすると衿元がきれいに見えます。凝った形より「整っていること」が効きます。 日本舞踊家の花柳凜さんは、日本髪の美しさを「一糸乱れぬ毛流れの美しさ」と表現し、「サッとしたまとめ髪でも、この日本髪のもつ『乱れのない毛流れとツヤ』を大切にすること」「簡単なお団子頭でも、きちっと整った清潔でツヤのあるまとめ髪を意識しています」と書いています(着物姿を一層引き立てる美髪ヘア)。
美容室に行く必要はありません。ブラシで毛流れを整えて低い位置でまとめ、後れ毛を作り込みすぎない。それだけで着物に合います。髪飾りを足すなら、低い位置に小さいものをひとつ。
出演する家族の髪はどうなる?
会の種類で変わります。 日本舞踊家の尾上菊右佐さんは、ホールでの発表会(本会)は「かつらや衣装の拵えをして、大道具やプロの照明、音響が揃う」一方、小規模なおさらい会では「プロに頼むのはヘアセットのみで、化粧、着付け、照明、音響もすべて自分達で」という例を挙げています(発表会とおさらい会の違い)。
つまり、かつらを掛ける会では出演者本人の髪型を考える必要はほとんどなく、おさらい会や浴衣会では自分の髪を結って舞台に出ることになります。何をどこまで用意するかは会ごとに違うので、教室からの案内が最優先です。 家族が家で手伝えるのは、当日の朝に慌てないよう持ち物を並べておくことくらいです。
舞台のかつらは、何を見ればいい?
かつらは役の身分と年齢を示す記号です。 文化デジタルライブラリーは、歌舞伎の女方が「化粧や衣裳やかつら」に加えて声やしぐさで女性像を作ると説明しています(女方の役どころ)。衣裳付けの日本舞踊もこの約束事をほぼ共有しています。
- 町人の娘 … 島田髷など。『藤娘』の藤の精は元禄島田
- 武家の妻・女官 … 「片はずし」
- 傾城(遊女) … 櫛やかんざしだらけの大きな髪
- 老女 … 白髪、ぼかした眉
- 狂乱の役 … 乱れ髪
髪を見るだけで「この人は誰か」が読めます。結い方の種類は、髪を結う文化から明治頃までで300ほどあったと言われます(花柳凜さん)。子どもの演目『羽根の禿』の日本髪も本格的なもので、花柳凜さんは5歳で掛けたときのことを「大変に重く衝撃的で」と書いています。舞台上の子どもが少し首を気にしていたら、そのせいです。
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